多発する警察官の不祥事

 

時代が近代化し、政治腐敗、人心荒廃が深刻化する現在、やはり時代の余波なのか警察の不祥事が止まらない。全国26万人の巨大組織であり、昨年(2012年)に懲戒処分を受けたのは458人、逮捕者は93人とこの10年で最多となったというから驚きである。一番多いのが組織を率いる50代であるというから事態は深刻だ。20代のわいせつ行為など、社会人としての資質にかかわるケースも少なくない。

 

大阪府警警察学校には、今年も600人の新人が入った。入校した新人に対して教育最大の眼目は、なんと、倫理観の向上と警察官としての覚悟の確認だったという。

 

若手警官に以前は考えられなかった不祥事が急増しているからだという。青少年愛護条例違反、公然わいせつ、軽犯罪法違反、迷惑防止条例違反、情報漏洩、事件隠蔽、挙句の果てには覚せい剤取締法違反と、あきらかにモラルの低下なのである。

 府警は、新人生徒に寮生活、武道などできびしく指導。「お前ら、休日も祝日も警察官だぞ。忘れるな…」、教官は言うが、一か月で約一割が「厳しい規律についていけない」と辞めて行くという。

 しかし、学校側はあえて引き止めない。「倫理観の欠如が是正できなければ転職をすすめる…」と、言っていた。

警官を目指すのであれば、当然そうあってほしいものだが、指導側からのコメントが、そう言わざるを得ないという実情が情けない。

  2年で警察を辞めた、20代の元警察官の取材記事によれば、配属先の交番で仕事に前向きの同僚はいなかったという。「だらだらとやりたい放題。一日中スポーツ新聞を読んでる感じ。トイレで株式・投資情報を見たり…」との話。国の司法の一端を司る者として、これでは採る方が間違いなのだ。

 50代の不祥事はもっと深刻だ。昨年、懲戒処分になった、50代のベテラン警部が語った記事を見ると、強盗事件の証拠として保管していたタバコの吸い殻を紛失したため、別の吸い殻を証拠に捏造したとのこと。なぜそんなことをしたのか。

 彼は管理業務の負担が背景にあったという。警察署の刑事課長だった為に事件捜査の指揮、署長・副署長への報告、捜査書類の決裁、部下からの報告、部下の勤務管理とそれでなくても業務は多く、このうえ証拠品の紛失が発覚すると、対応に追われて仕事が回らないと考え、上司に言えなかったのだという。

当然、自分への責任追及を逃れたいという邪な思いが存在したに違いないが、正義より立場を優先させたというのが真実だろう。これではまったく漫画の世界である。

 

  警察が内部監察を強化してもう十四年になる。各地の警察で、不祥事の隠蔽や、事件への不適切な対応が続発したからだというが、後から付けた言い訳に過ぎない。その後、不正経理問題など、不祥事が起こるたびに管理対象が拡大され、最近では仲間うちの飲み会まで、上司の決裁が必要なのだという。明らかに異常な縦社会なのである。つまりは、内部監察強化でモチベーションが低下したまでか、「仲間うちの飲み会も上司決済」となり、ストレスが溜まると言いたいのだろか。そうした管理社会ゆえの不祥事だというのか。いずれにしても、これが制服を着る大人の言い訳なのか・・・。子供の言い訳みたいな話である。

 この閉塞感から辞めていく者もいる。一昨年、三○代半ばで退職した男性は、捜査畑で将来の幹部候補だったが十五年のキャリアを捨てた。「窮屈になりすぎました。何から何まで管理されて、ロボットみたいなのです。」内向きの論理が優先し、保身に走る上司ばかりで、「泥棒や、悪い奴を捕まえるという話じゃなくて、事故(不祥事)防止ばかり。毎日頑張っても、自分が情けなくなってモチベーションが下がるだけなんですよ」と、言っていた。

 同志社大の太田肇教授は「市役所や小中学校もそうですが、管理手続きが煩雑になって肝心の仕事ができなくなってしまうんです。上司の顔色を見て、挑戦するよりミスをしない方がいいとなってしまう。警察でそういう風潮がでることは危険です」と話す。私情ばかりが優先し、少しも自分の警察官であるという立場を弁えない。これが法を守るために働く、我らが警察官のありようなのか・・・。

 日々頻発する警察官・公務員の不祥事。我々庶民としては、信頼していただけに悲しいほど遺憾に思へて仕方がない。毅然とした警官・公務員は何処に行ってしまったのか。これも時代のひずみなのか。警察機関の信頼度は薄れていくばかり。『世も末』とはよく言ったものだ。

 筆者の近所のおばさんは、「今じゃ警察官より、ヤクザの方がよっぽど信用できるよ・・・」などといって笑う。それほど庶民の信用を失墜させた警察組織。どう立ち直そうというのか・・・

 

<NHKクローズアップ現代(二○一三年五月一六日放送「不祥事多発警察で何が」)参考>